研究概要 |
平成24年度において、当研究課題に関して、主として以下の研究を行って成果を得た。 (1)測定やフィードバックなどの情報交換プロセスにおいて、普遍的に成立する「揺らぎの定理」の一般化と、熱力学第二法則の一般化を導出した。これらの一般化においては、情報交換プロセスにおけるエントロピー生成と、交換された相互情報量が対等に扱われる形になっている。またこの結果を導出する際、測定とフィードバックを統一的に扱う枠組みを定式化した。これによって、測定とフィードバックは、お互いにいわば「双対的」なプロセスであることが明らかになった。さらに、この結果は、測定とフィードバックに限らない一般的な情報交換プロセスにおいて成立する。この成果はPhysical Review Letters 109, 180602 (2012)から出版された。また、この成果は、下記の研究を行う上で、基礎となる理論的枠組みとなった。 (2)自律的な情報処理を行う分子マシンが形成する、情報の流れを伴う非平衡状態についての研究を行った。その結果、定常状態における相互情報量(相関)の生成レートやエントロピーの生成レートを明らかにした。そして、通常の(情報処理を行わない)分子機械の場合と異なり、有限速度で動いているときにエントロピー生成がゼロになることを発見した。これは情報処理を伴う非平衡定常系に特有の、顕著な性質であると考えられる。この成果は論文にまとめられて、現在Physical Review Lettersに投稿中である。
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