研究概要 |
本年度に得た主な成果は下記の(1)、(2)である。 (1)閉じてない場合の4次元多様体の微分構造は,特殊な場合を除いてあまり研究されてこなかった。今年度は対数変換、knot surgery、adjunction不等式、Stein構造、コルクなどを応用することで、閉じてない4次元多様体の微分構造について研究し、主に下記の(i),(ii),(iii)の結果を得た。 (i)位相不変量に関して広範囲の境界付き4次元多様体が無限個のエキゾチック微分構造を持つことを示した。 (ii)全てのStein fillableな3次元多様体が、4次元多様体であって無限個のエキゾチック微分構造をもつようなものの境界として実現できることを示した。 (iii)ある緩い条件下ではカスプ近傍での対数変換やknot surgeryがコンパクトStein多様体を産まないことを示した。 これらの結果はarXivにプレプリント(arXiv:1111.0620)として載せている。 (2)プラグの特殊なケースでもあるGluck twistについて、Selman Akbulut氏(ミシガン州立大学)と共同研究を行った。エキゾチック4次元球面の存在問題は重要な未解決問題だが,Gluck twistはエキゾチック4次元球面を産む操作の候補として知られている。実際、向き付け不可能な場合にはエキゾチックな4次元多様体の対が構成されている。一方、向き付け可能な場合には、Gluck twistによってエキゾチックな多様体の対を構成できるのかわかっていない。我々は、交差形式と基本群に関する適当な条件の下では、Gluck twistが向き付け可能な4次元多様体の微分構造を変えないことを示した。この結果はさらに考察した後に論文にまとめる予定である。
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