研究概要 |
本研究の目的は、中性子反射鏡として有望な重水素化Diamond Like Carbon (DLC)薄膜の成膜技術を世界に先駆けて行うことである。当該年度にて重水素化DLC薄膜試料を製膜パラメータを変えて複数製作し、中性子反射鏡としての特性を以下の方法により系統的に調査した。なお、製膜パラメータに関しては、今年度はバイアス電圧のみに集中した。1、RBS/ERDA法による元素比率組成の測定。測定は筑波大学のタンデトロン加速器を用いて行った。2、X線反射率法による密度および膜厚の測定。測定は理化学研究所のSmartlab装置を用いて行った。3、中性子反射率法による核力ポテンシャルの測定。測定は京都大学原子炉実験所および茨城県東海村のJ-PARC物質生命科学研究施設にて行った。比較のため、同様の測定を軽水素DLC薄膜についても行った。以上の測定結果より、(1)重水素DLCの核力ポテンシャルは軽水素DLCのそれに比して当初の予測通り高いことを確認した。(2)1および2の結果による核力ポテンシャルめ推定値と3の結果を比較し、線形性が良いことを確認した。(3)バイアス電圧がおよそ0.5kVの時に膜密度が最大となることを確認した。また、今後の検討課題を以下に挙げる。(A)(1),(2)の結果では測定値と推定値の問におよそ15%の差があり、原因については目下調査中である。(B)非鏡面反射の評価については3の測定でデータはすでに同時に取得されており、現在詳細解析中を行っている。以上の結果を踏まえて、次年度には重水素DLC薄膜による超冷中性子導管の試作、性能評価を行う。
|