研究概要 |
斜方晶の希土類内包カゴ状構造をとるCeT2A110(T=Fe,Ru,Os)がいずれもCe4f電子と伝導電子との強い相関による擬ギャップを低温で形成し、さらにT=Ru,Osはそれぞれ27K,28.5Kで相転移を示す。この相転移について、Ce価数と構造の変化を引き金としたこれまでのCe化合物では見られない特異な磁気転移であることが強く示唆されている。本研究では、擬ギャップの形成および特異な相転移の機構を解明するために、元素置換による擬ギャップと相転移の変化を調べた。 まず、CeRu2Al10およびCeOs2Al10のRu,OsサイトをFeで置換した試料を作製し、中性子散乱実験を行った。CeRu2Al10およびCeOs2Al10では、中性子非弾性散乱スペクトルにスピンギャップよるピークが、相転移温度より少し高温から観測されることが知られている。Fe置換した試料では、相転移温度がほとんど変化しないにもかかわらず、この非弾性散乱ピークが2本に分裂したスペクトルを観測した。Fe置換とともに転移温度以下での電気抵抗は金属から半導体的な振る舞いに変化することから、格子定数の減少にともなってスピンギャップとチャージギャップが分離したと考えられる。 一方、CeRu2Al10のAlサイトをGaで置換した試料を作製したところ、7%のGa濃度まで置換できた。格子定数は0.2%の拡大にとどまったが、相転移温度は25Kまで減少し、また擬ギャップの大きさも50Kから20Kまで減少した。つまり、AlサイトをGaで置換することで、相転移と擬ギャップ形成の両方が抑制されることがわかった。
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