研究課題/領域番号 |
23840034
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高橋 雅裕 学習院大学, 理学部, 助教 (00613697)
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キーワード | ボーズ・アインシュタイン凝縮 / 準周期系 / 非線形Schroedinger方程式 |
研究概要 |
本年度は主に、レーザー光を用いて作成された準周期系であるFibonacciポテンシャル格子中にあるボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)についてその定常状態を解明した。Fibonacciポテンシャル中の一粒子波動関数は解析的に解くことができ、それがmultifractalを含むcritical状態であることが分かっている。また、critical状態のエネルギースペクトルはsingular continuousになることも知られている。一方で、今回考えたBECの系では、粒子間相互作用によって生まれる非線形効果が重要である。非線形効果のない場合の先行研究により、critical状態が現れるのは非常に特殊な場合に限られており、外からの摂動に対して非常に弱いと予想されるが、私の研究では非線形相互作用に対しては非常に強いことが示された。この研究では、数値計算と数学的な証明をいくつか用い、これまでにない強い主張:1.critical状態が非線形相互作用に対して強いこと、2.非線形相互作用の強さとエネルギースペクトルを軸に取った場合に解の許されない場所が存在すること、を導いた。これにより、実際のBECの実験でcritical状態の検証可能性が大きくなった。critical状態の波動関数はこれまで実際に見られたことがないため、実現すれば強いインパクトがあると考えられる。その準備として、本研究の結果は非常に重要であると考える。 また、非線形Schroedinger方程式の研究に対しても数学的に重要な結果を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザー光を用いて実現する特殊なポテンシャルを考慮し、本系の独自性を活かした、準周期系に着目し、数値計算と数学的な証明を用いて確かな結果を出すことができた。今後さらなく発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
定常状態だけでなく、拡散を見るなど、その動的振る舞いについて考察する必要がなる。定常状態が全て局在しているとしても、その動的振る舞いは無限に拡散するという一見矛盾した結果が予想されるからである。上記の内容についてきちんとした数値計算と、理論を詰めることで確かな結論を得る。さらにこの系で、リドベルグ原子を介した有限距離の相互作用をいれれば、それはまた異なる定常状態が期待できる。synthetic gaugefieldによってベクトルポテンシャルを入れた計算も行いたい。つまり、2次元の準周期系を用意し、そこにトポロジカルな欠陥ができる場合を考えることになる。
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