研究課題
今年度は、最近統計物理の分野で大きな注目を集めているlocally confined hard spheresと呼ばれるモデルに対するスケール極限の研究を行った。このモデルの研究の最終的な目標は、完全に決定論的なハミルトン系モデルから、いったんメゾスコピックな確率モデルを導出し、さらにこの確率モデルに対する流体力学極限を示すことで、決定論的なエネルギーの拡散方程式を導出することである。これにより、決定論的なミクロモデルからスケール極限によりマクロな拡散方程式を導出する厳密な手法が初めて与えられることとなり、非常に重要なテーマである。このうち、前半部分のメゾスコピックな確率モデルの導出に関する結果がすでに複数の研究者らにより発表されていた。しかし、ここで得られる確率的なメゾスコピックモデルは非勾配型であり、さらに状態空間が連続であるなどハミルトン系に由来するモデル共通の難しさを抱えている。そのため、ここで得られた確率モデルからのスケール極限の導出は困難となっていた。今年度は、このlocally confined hard spheresから得られるエネルギーの確率モデルに対するスペクトルギャップの詳細な評価を与えることに成功した。これは、非勾配型モデルに対するスケール極限を証明する際には欠かせないステップであり、これに成功したことで、最終目標に大きく近づいた。さらに、ここで用いた方法は、より一般のエネルギーの拡散モデルに適用できることがわかった。これにより、locally confined hard spheresと並んで重要と考えられているweakly interacting geodesic flows on manifolds of negative curvatureと呼ばれるモデルに対するスケール極限に対しても、その重要なステップの証明を与えることができた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 6件)
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