研究概要 |
1,私の研究目的はネーター環のAB性について研究することである.平成23年度における研究計画は,AB環に関連するホモロジカル次元「AB-次元」を定義し,それがとても良い性質を持っていることを証明することであった.環のAB性を詳しく整理することで,「AB-次元」を定義することができた.また,「AB-次元が有限である.」という仮定を加えれば,「Auslander-Reiten予想」が正しいことも証明することができた.これは環論におけるホモロジカル予想を解く上で,大きな前進である.この研究結果に関し,12月にベトナムクイニョン大学で行われた7-th Japan-Virtnam Joint Seminar on commutative algebraおよび3月にアメリカミズーリ大学でのセミナーなどで講演を行った。また,この研究結果を論文にまとめ,Illinois Jounal of Mathematicsに投稿中である. 2.奈良工業高等専門学校の飯間圭一郎氏とともにAuslander-Bridger型の近似定理の拡張に関する研究も行った.Auslander-Bridgerの近似定理はAuslander-Buchweitzの近似定理とともに可換環論におけるとても重要な近似定理である.我々はこの二つの近似定理の共通の拡張となる近似定理を与えることができた. 3.名古屋大学の伊山修氏,高橋亮氏,千葉大学の相原琢磨氏,大阪市立大学の吉脇理雄氏との共同研究で三角圏上の次元に関する研究を行った.三角圏の次元はRouquierが導入したものであり,三角圏の大きさを測る不変量である.我々はこの概念を拡張し,それが既存の結果の拡張であること,多方面に応用があることを示した.この研究結果はTransactions of the American Mathematical Societyに投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究計画通り,次数付環のAB性について研究を行う.また,次数付環の基本的な性質を勉強し直すために,9月に名古屋大学で,次数付環に興味がある研究者を集めて勉強会を行う.
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