平成24年度は、平成23年度に引き続き地上トランジットサーベイグループSuper-WASPのアーカイブからトランジット惑星候補を50個あまり選定し、その候補が本物の惑星であるかどうかを判別するため、岡山天体物理観測所188cm望遠鏡のISLEによって高精度測光観測を実施した。今年度は岡山で30夜あまりの観測時間を公募によって獲得し、14天体の観測を実施することができた。その結果、この中には本物の惑星と考えられるものはないことがわかった。この結果は偽検出の確率が9割程度という過去のトランジットサーベイの結果と矛盾しない。この結果については、共同研究を行っているハワイ大学のグループと共に論文をまとめている。 一方、既に発見されている低温度星まわりのトランジット惑星の観測として、2009年に発見されたスーパーアースGJ1214bの観測を南アフリカ天文台IRSF1.4m望遠鏡のSIRIUSと、すばる8.2m望遠鏡のSurprime-CamおよびFOCASで実施した。そのうち、2011年にIRSF/SIRIUSで観測した近赤外JHKsバンドの同時測光の結果を論文としてまとめ、受理された(Narita et al. 2013)。この結果では、この惑星のトランジットがJバンドよりKsバンドで有意に深いという先行研究の結果(Croll et al. 2011)を否定し、有意に深い兆候はないことを明らかにした。これは近年の他の研究とも一致した結果で、惑星が水蒸気を主成分とする大気か厚い雲に覆われた水素大気を持つというモデルを支持する。さらに2012年のIRSFでの追観測と、すばる望遠鏡での可視Bバンドの観測でも同様の結果を得ており、これは現在論文にまとめている。 以上により、太陽系近傍の低温度星のトランジット惑星探しとその惑星の特徴付けの研究において、目標をほぼ達成することができたと考えている。
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