研究概要 |
本研究の目的は、新しく開発する「パリティ移行核反応」の手法を活用して、原子核の0-状態強度分布を実験的に抽出することである。未知の性質を持つ0-状態の全貌を明らかにすることで、原子核構造の理解に本質的な役割を果たすパイ中間子相関に関する知見を得る。 パリティ移行核反応である(16O,16F)反応を測定するためには、16F→p+15Oで放出される陽子と15O粒子を同時検出する必要がある。昨年度は、崩壊陽子用の検出器として、新たに多線式ドリフトチェンバー(MWDC)の設計・製作を行ったが、本年度は、製作したMWDCに対してイオンビーム実験を行い、性能評価を行った。具体的には、エネルギー250MeVの陽子ビームを照射して、MWDCの位置分解能、検出効率などの性能評価を行った。実験の結果、位置分解能300μm(FWHM)、検出効率100%を達成し、製作した検出器が目標の性能を有していることを確認した。これにより、パリティ移行核反応の実験準備が整ったといえる。残念ながら、加速器の運転日程の都合などから、研究期間までにパリティ移行核反応の本実験を行うことはできなかったが、来年度には実験が行われる予定である。 また、原子核の0-状態のパイ中間子相関による影響を調べるために、理論研究者と協力して、乱雑位相近似計算による理論的解析を行った。その結果、0-状態の強度分布は他のスピン・パリティの状態よりもパイ中間子相関に敏感であり、その分布を実験的に抽出できれば、パイ中間子相関の強さを確定できる、よい指標となることが分かった。
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