研究課題
本年度は,熱水試料のホウ素同位体分析を行い,噴出孔ごとに熱水の端成分を推定し,ホウ素濃度とあわせて考察を行った.1) 堆積物で覆われていない熱水系:マヌス海盆Vienna Woodsの噴出熱水はホウ素濃度が低く同位体比が高い(0.54 mM, 29.8‰)という中央海嶺熱水系に似た組成を示した.一方,マヌス海盆PACMANUSと伊豆小笠原弧水曜海山は,ホウ素濃度が高く同位体比が低い(1.45-1.52 mM, 13.6-18.5‰)という特徴を示した.マリアナトラフのAlice SpringとForecast ventは,これらの中間的な値(0.63-0.72 mM, 19.9-24.0‰)を示した.これらの特徴は,基本的に母岩のホウ素濃度の違いによると考えられる.2) 二相分離している熱水系:海底下での二相分離により気相に富んでいる北フィジー海盆の噴出熱水は,中央海嶺熱水系と似た組成(0.44-0.56 mM, 34.5-35.9‰)を示した.二相分離におけるホウ素同位体分別は非常に小さいことを考えると,この組成は水-岩石反応を反映していると考えられ,熱水がMORB的な岩石と反応したことを示している.3) 堆積物に覆われた熱水系:沖縄トラフの噴出熱水は,非常に高いホウ素濃度と低い同位体比(4.4-5.9 mM, 1.5-2.6‰)を示し,高いCs/B比を持つ.このことは,熱水が岩石だけでなく堆積物とも反応し,多量のホウ素が堆積物から熱水に溶出したことを意味する.全ての噴出熱水のホウ素同位体比は濃度の逆数に比例し,基本的に反応した岩石または堆積物から溶出したホウ素の量に支配される.本研究は,島弧・背弧熱水系のホウ素濃度及び同位体比を体系的に明らかにし,水-岩石反応におけるホウ素の挙動及びホウ素循環における噴出熱水の寄与に関して,重要な知見をもたらした.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Geochimica et Cosmochimica Acta
巻: 84 ページ: 543-559
DOI:10.1016/j.gca.2012.01.043