研究概要 |
ジャスモン酸グリコシドは,アメリカネムノキの就眠運動を誘導する化合物である.それゆえ,植物体内におけるジャスモン酸グリコシド量とそのアグリコン量の変化が,この就眠運動を引き起こしていると考えられる.本研究では,これらのグリコシド生合成・加水分解機構を分子レベルで明らかにすることを試みた. まず,ジャスモン酸グリコシドとそのアグリコン,ジャスモン酸のESI-LCMS/MSの条件検討を行い,それぞれを同時に検出することが可能になった.また,内部標準物質として,重水素標識体を使用した.これらの測定法を用いて,アメリカネムノキの様々な部位のジャスモン酸グリコシドとそのアグリコン,ジャスモン酸含量測定を試みた.これまで,アメリカネムノキの葉枕部分の細胞膜の外にジャスモン酸グリコシドが局在していることが報告されている.まず,細胞外(導管液中)のジャスモン酸グリコシド量とそのアグリコン量の変化が重要だと考え,経時的に導管液を取り測定した.しかしながら,これらを検出することはできなかった.そこで,幼植物の地上部全体のジャスモン酸グリコシドとそのアグリコン,ジャスモン酸を測定した.ジャスモン酸グリコシドのみ検出され,葉が閉じる時間に濃度が増加することを見出した. 就眠運動の初期には,細胞内のカルシウムの濃度変化が重要である.そこで,機械刺激応答カルシウムチャネルであるMCAは,アメリカネムノキの就眠運動に重要な役割を果たしていると考えられる.そこで,他の植物に保存されているMCAのDNA配列情報をもとに,アメリカネムノキの全長DNAの単離した.また同時に,RNA量の内部標準遺伝子としてTubulinの断片配列の単離に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
ジャスモン酸グリコシドは,アメリカネムノキ全体で生合成されている可能性が高いため,地上部の様々な部位別に測定を行う.特に葉枕部分の収縮する細胞と伸張する細胞を分けて,これらの部位でジャスモン酸グリコシド濃度に変化がないかを調べる. また,就眠運動に大きな役割を果たすであろうMCAチャネルの機能解析や,より詳細な発現解析を行いたいと考えている.
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