研究概要 |
近年、大腸菌O157:H7やサルモネラなどの病原細菌が環境水に混入し、生鮮野菜などを通してヒトに感染するという事例が相次いで報告され、大きな社会問題となっている。これらの感染症を未然に防ぐためには、環境水中における病原細菌を検出・定量し、汚染源を早期に特定することで、病原細菌の水系への混入を除去する必要がある。しかしながら、低密度に存在する病原細菌を環境水サンプルから特異的に検出・定量する手法は、いまだ確立されていない。そこで本研究では、増殖能力のある病原細菌を特異的に検出・分離する手法を開発し、さらに分離した病原細菌の由来(=汚染源)を特定することで、最終的に安全・安心できる水環境を構築することを目指した。 本研究では、蛍光標識したO157抗体とフローサイトメトリによるセルソーティング(FCM-FACS)を用いて、大腸菌O157を特異的に検出し、分離する手法を構築した。分離後の細胞は培地で増殖させたのちO157であることを確認した。純粋培養株を用いた実験の結果、大腸菌O157と大腸菌K12を任意の割合(50%, 10%, 1%, 0.1%, 0.01% O157)で混合したサンプルからも大腸菌O157だけを高効率に分離することができた。 環境水サンプルに本手法を適用するにあたっては、濾過および細胞の回収方法、懸濁物質の除去手法などを検討し、最適化した。その結果、大腸菌O157を比較的低濃度(10 cells/ml)接種した環境水サンプルからも病原体を特異的に検出・分離することができた。今後は非接種の環境水サンプルから病原体を検出・分離し、分離後の病原体を解析することによって、汚染源の特定につなげていきたい。
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