研究概要 |
本研究は,次世代の半導体・LEDウェハ表面に要求される微小欠陥検出実現のための,全く新しいウェハ上微小欠陥検出原理を確立することを目的としている.提案する計測原理では,軽微な接触によって発生する極小摩擦熱を熱検知素子抵抗値の変化に変換してウェハ表面上の微小突起を検出する. 本年度は,(1)微小突起検出時の熱検知素子における熱的メカニズムの解明,(2)フォトリソグラフィプロセスによる熱検知素子試作および(3)信号処理システムの構築を中心に研究を遂行した. (1)では,簡易モデルおよび有限要素モデルによる原理検討を実施した.微小突起と素子の接触をモデル化して発生摩擦熱量を見積もり,これを境界条件として与え,突起検出時の素子温度変化を検討した.その結果から,(a)本研究で検出目標とする高さ16mm程度の突起との接触で発生する摩擦発熱量はμWのオーダであること,(b)発熱量は微弱であるが,熱検知素子のサイズを1μm以下に設定することで,充分検出可能な素子温度上昇が得られること,及び(c)100ns程度の高い応答性が期待でき,素子サイズ縮小で更に応答性を高められる可能性があること,を明らかにし,提案の手法による微小突起検出実現の可能性を見出した. (2)では,フォトリソグラフィプロセスによる熱検知素子試作検討を実施した.今年度は本試作の前段階として,やや大きめのサイズの薄膜抵抗体構造の試作に取り組み,数十μm四方サイズの熱検知素子試作プロセスを確立した. (3)では,熱検知素子の代用として市販のMR(磁気抵抗効果)素子を用い,センサバイアス印加回路,アンプ回路およびフィルタ回路を含む信号処理システムを設計・試作した.併せて集光レーザ光学系によるセンサ評価装置を構築し,熱検知素子に可変熱量を与えての特性評価を実現するとともに,試作した信号処理システムが設計どおり動作することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱検知素子の熱的メカニズム検討については,簡易モデルによる原理計算,およびFEMシミュレーションによる検討の結果,提案の手法による微小突起検出実現の可能性が見出せており,概ね順調に進んでいる.熱検知素子試作については,数十μm四方サイズの熱検知素子試作プロセス確立には至ったものの,μmオーダのセンサ試作の必要性が原理検討において確認されため,現在その試作プロセス確立を加速しているところである.一方,信号処理システムについては,市販MRセンサを代用することで予定どおり構築を進めるとともに,併せて集光レーザ光学系によるセンサ評価装置を構築してセンサ評価装置の準備を前倒しで進めた. 以上を鑑み,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
熱検知素子の熱的メカニズム検討については,今年度に確立した解析モデルに輻射熱の影響を考慮することで,非接触での微小突起検出の可能性を見出したいと考えている.熱検知素子試作についてはμmオーダの素子試作を実現するため,高精細フォトマスクの適用を検討するとともに,アウトソーシングによる試作も視野に入れて検討を進める.また,試作した熱検知素子は,今年度構築した集光レーザ光学系装置で実験的評価を実施するとともに,レーザ等で人工的に作成したバンプ,及び実際のウエハ上に存在するデフェクトを用いて実験的に評価を実施し,提案の手法の有効性を実証する予定である.
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