研究概要 |
接合が困難であるポーラスアルミニウムの新しい接合プロセスとして,低融点発泡前駆体(プリカーサ)の発泡過程の利用を提案する.また,その有用性を確かめることが本研究の目的である. 本研究は以下に示す4つの手順から成る.1.低融点アルミニウム合金粉末より接合用の低融点プリカーサを作製する.2.得られた低融点プリカーサの発泡試験を行い発泡挙動を調べる.3.接合対象となる2つのポーラスアルミニウム直方体に溝加工を施し,溝内部で低融点プリカーサを発泡させることで接合体を得る.4.接合部の光学顕微鏡観察を行い接合界面の有無を調べ,接合体の4点曲げ試験を行い接合強度を評価する. 低融点アルミニウム合金として,アルミニウムのろう付けによく利用される4045アルミニウム合金を用いた.4045アルミニウム合金を研削して得た研削粉をボールミルで粉砕し,ふるいにかけ,粒径300μm以下の合金粉末を得た.合金粉末に対し発泡剤として粒径45μm以下のTiH_2粉末1mass%及び気泡安定化粒子として粒径約1μmのAl_2O_3粉末2mass%を添加し混合した.金型温度693K,723Kにおいて,70MPaの圧力を60min負荷して焼結温度の異なる2種の低融点プリカーサを得た.比較のために粒子径180μm以下の純アルミニウム粉末を素材として同様の作製条件により純アルミニウムプリカーサを得た. プリカーサを立方体に切出し発泡試験を行った.金型温度723Kで作製された純アルミニウムプリカーサを933Kで加熱すると最大気孔率約80%の高気孔率ポーラスアルミニウムが得られた.一方,低融点プリカーサはプリカーサ作製時の金型温度がどちらであっても最大気孔率は約20%程度であった.4045アルミニウム合金は純アルミニウムよりも高強度であり,粉末表面の酸化被膜を十分破壊可能な塑性変形が生じなかったと考えらえる.つまり,粉末同士の界面より発泡剤から解離した水素ガスがマトリックス外部に流失したため低気孔率になった.接合実験の前に低融点プリカーサの作製条件の改善を必要とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
低融点アルミニウム合金の入手が予想以上に困難であった.粉末冶金用ホットプレスとして借用を予定していた万能試験機が新型機導入のため利用停止になり,実験要求仕様を満たす代替え装置の借用先が見つからなかった.加えて,申請者が作製した粉末冶金用金型が破損し実験が滞った.さらに,発泡試験に借用予定であった炉が故障し整備に時間を要した.以上のようなトラブルが続いたため研究が遅れた.
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今後の研究の推進方策 |
11で述べた理由により接合実験まで到達していない.プリカーサ作製時の応力及び温度を上昇させることにより,高気孔率ポーラスアルミニウムが得られる低融点プリカーサの作製を試みる. 次に,低融点プリカーサを用いた接合体の作製を試みる.光学顕微鏡観察により金属結合がなされるか調べる.接合がなされない場合,母材となるポーラスアルミニウムの表面の酸化被膜を除去するために表面処理を施しその影響を調べる.
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