研究課題/領域番号 |
23860018
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
蘇 亜拉図 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特任助教 (80611532)
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キーワード | MRI対応複合線材 / 非磁性 / バイオマテリアル / 構造・機能材料 / 医療・福祉 |
研究概要 |
本研究では、磁気共鳴法による画像診断(MRI)において、アーチファクト(虚像)を発生しない生体用非磁性複合線材の開発を行う。平成23年度では、(1)合金元素添加によるZr-Mo合金の磁化率の低減と(2)低磁性Zrと反磁性Agの複合化による磁化率低減を行った。 (1)Zrに対する添加元素にはZrやMoより低い磁化率を持ち、固溶強化が期待できるA1を選択し、A1を添加したZr-Mo合金の磁化率と機械的特性を調べ、これらの特性に及ぼす添加元素Alの影響を検討した。α^1相から構成され、低磁化率・高延性を有するZr-0.5Mo合金にA1を添加したところ、A1濃度の増加に伴い磁化率は緩やかに減少し、更に強度が上昇した。その結果、Zr-0.5Mo-3A1合金の磁化率は現行の生体用Ti-6A1-4V合金と比較して1/3以下の値を示し、機械的特性は同等の引張強さを示し、MRI対応型生体用合金としての応用が期待できる。 (2)Agを芯材としZrを被覆材することにより複合化を行い、Agの体積率を変化させたZr/Ag複合材料の磁化率に及ぼすAgの影響を検討した。Zr/Ag複合材料はスウェージング加工を行い、減面率64%(φ3mm)まで加工し磁化率を評価した結果、Ag体積率の増加に伴い磁化率が直線的に減少した。特に、Agの体積率が81%のとき磁化率は1.88x10^5を示し、現在使用されている生体金属材料の中でも低磁性を示すTiの磁化率の約1/10の値を示した。ZrとAg丸棒材の磁化率を用いて、複合則によりZr/Ag複合材料の磁化率を計算したところ、実測値は計算値より高い傾向を示した。XRDより、Zr/Agには集合組織を調べたところ、集合組織が形成されることが確認され、Zr/Ag複合材の磁化率には、結晶配向が影響を与えていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Zr-Mo/Ag複合材料の磁化率をゼロに低下させるためにZr/Ag複合材料の線材化を進めた結果、磁化率低減の因子は構成金属の体積比だけでなく集合組織の影響を検討する必要性があることを実験的に明らかにしている。また、これまで得られた実験結果を国内外における学会で発表し、論文化も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度では、磁化率と合金元素の体積比の関係や磁化率に及ぼす集合組織の因子が明確になりつつある。今後は非磁性複合材料の開発を平成23年度の結果より進め、現在Zr/Ag複合材料の細線化を進めている最中である。 また、磁化率ゼロを達成できる複合線材に対しては、MRIアーチファクト測定、機械的特性を評価した後に、脳動脈瘤クリップを試作する予定である。得られた結果は順次学会発表を行い、論文化を進める。
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