本年度はナノドメインの安定性に及ぼす温度の影響を明らかにするために、透過型電子顕微鏡内で試料を冷却・加熱し、その場観察を行った。その結果、ナノドメインは低温で安定であり冷却により成長すること、高温にするとナノドメインは消滅することがわかった。この温度依存性はマルテンサイト相の生成に対する温度依存性から説明できる。 また、形状記憶特性の特異な試験温度依存性を解明するため、昨年度作製した引張応力下その場X線回折測定用治具を用いてその場測定を行った。その結果、形状記憶特性に異常が発生する温度はナノドメインの消滅する温度と同じであり、このときの変形は応力誘起マルテンサイト変態によって進行することが明らかになった。また、この応力誘起変態は通常の形状記憶合金とは異なり、時間依存性を伴うこともわかった。
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