低損失、高耐圧のSiCパワーデバイス実現の『カギ』を握るのが、SiC単結晶の高品質化である。現在、市販されているSiC単結晶には、高密度の欠陥が含まれている。特に貫通らせん転位(TSD)は、電流のリーク源となり、デバイス特性、信頼性の大幅な低下をもたらす事が知られている。本研究では、溶液成長法における、貫通らせん転位の低減に関する研究を実施した。 本年度は、溶液法によって成長したSiC結晶中の欠陥のキャラクタリゼーションおよび、欠陥低減メカニズムに関する研究を実施した。 X線トポグラフィー法および、透過電子顕微鏡法を複合的に用いて、SiC結晶中の欠陥評価を行った結果、溶液成長中に貫通らせん転位が基底面の欠陥に変換していることが明らかとなった。また、貫通らせん転位は、積層欠陥をはさんで複数の部分転位に分解していた。 表面モフォロジーと貫通らせん転位の変換率を比較すると、ステップバンチングによって生じたマクロステップのステップフロー成長によって、効果的に貫通らせん転位が変換することが明らかとなった。また、微傾斜を設けた種結晶を用いて、ステップフロー成長をエンハンスすることによって、貫通らせん転位の変換率を飛躍的に向上させることに成功した。さらに、種結晶の傾斜角度を変化させることによって、貫通らせん転位の変換率を99%以上にまで向上させ、溶液成長法による、貫通らせん転位フリーの、高品質SiC結晶成長の可能性を示した。
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