近年の学校計画研究は「ソフト面の検証」および空間利用の実態報告が主となっている。しかし、学校を「建築」と捉えた場合、柱や壁など、一端施工・配置されれば容易には変更のきかない構成部材や空間に対し、計画的配慮は不可欠である。この背景より、本研究は小学校および中学校建築を対象とし、以下2点を特徴とする。① 学校建築において、空間利用者には容易に変更のきかない様々な空間および構成体に焦点をあてる。② 児童・生徒の活動と上記要素との関係から、学校建築の建築的特質を検証する。 そして、本研究の目的は、児童・生徒の活動を詳細に観察記録を行い、上述のような空間の形状、素材、配置場所、配置方法を比較分析することで、学校建築の計画・設計に結びつく実証的計画指針を提示することである。 本研究ではまず、1980年~2011年の間発行された新建築などの建築専門誌より40事例以上の小学校、中学校建築を抽出し、各事例が、どのような空間構成要素を備えているか分析した。次に、これらの構成要素を12に分類し、各事例が12類型のうち、どのような要素を備えているかカウントし比較した。事例の大半は5、6種をそなえているが、中には12全種を備えている事例もあった。次に、これらの事例から構成要素を多くもつ10事例を視察し、各校の校長・教頭・教師に普段の使い方の様子をヒアリングするとともに空間の使用状況を確認した。さらに、これらの事例において行動観察調査を行った。調査の視点は、「ユニットの形によって、教師の思考、孤児童の行動がどのように変わるか」、「学校建築の柱はどのように人間の行動に影響を与えるか」、「人間の活動のよりどころとする空間装置は、形態別にどのような役割をはたしているか」の3点とし、それぞれに、これまで学校建築研究では明らかにされてこなかった計画要件を導くことができた。
|