研究概要 |
地下岩盤に形成される構造物には長期安定性の確保が必要である。また最近では,大地震や大津波により,地表での生活や産業などに大きな打撃が与えられたことが問題となっている。このような背景により,安定した環境が期待できる地下環境の有効利用が,今後の人類の生活や社会の産業の発展に不可欠であると考えられる。ゆえに,地下環境で得られる現象の調査や,それを利用して安定した環境の形成につなぐことのできる研究は極めて重要と考えられる。本研究では,地下のような,圧力下で化学反応が生じる場合に起こる岩質材料(岩石やセメント系材料)の破壊修復を活用して,構造物の長期安定性の確保に繋がる研究を行う。平成23年度は,主に実験的研究を行った。初めに,あらゆる履歴を加える前の材料の力学試験(弾性波速度測定と透水試験)を行う。続いて,圧力下で周辺環境(温度・湿度・水質)を制御した条件下で力学試験を行い,破壊の修復を調べる。弾性波速度測定より,大気中において,周辺環境の湿度が上昇する際に,速度が低下するという結果が得られた。これは,湿度上昇に伴う岩石内粒子間の接触力の低下を示すものであり,低湿度下において岩石の安定性が増すということが結論付けられる。また,花崗岩を用いた透水試験より,圧力の上昇とともに透水性が低下することや,き裂が多く分布する方向において透水性が高くなることが示された。また,水中に保存したセメント系材料において,カルシウム化合物の析出によりき裂が修復することが確認された。すなわち,破壊が修復し,水の流れが断たれて透水性が低下することによって,遮蔽性が向上する可能性が示された。
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