研究概要 |
狭線幅かつ波長可変で、絶対値が周波数標準に位相同期したCW-THz波を出力可能なTHzシンセサイザーは、分光センシングやTHz無線通信において有用である。本研究では、波長可変CW-THz波の発生技術として広く用いられるフォトミキシング技術に対して、光周波数コム技術を導入することにより、マイクロ波周波数標準(水素メーザー)に位相同期したTHzシンセサイザーを開発する。 まず、前年度に開発したデュアル光コムに対して、2台の単一モードCWレーザーを位相同期することにより、デュアル光シンセサイザーを実現した。次に、デュアル光シンセサイザーの光周波数差を0.14THzで安定化した状態で、両レーザー光を光ファイバーで空間的に重ね合わせ、干渉により0.14THzの光ビート信号を生成する。そして、この光ビート信号を単一走行キャリヤ・フォトダイオードでフォトミキシングすることにより、光ビート周波数に等しいCW-THz波(平均出力250uW)を自由空間に放射させた。 まず、CW-THz波のスペクトル特性をTHzコム参照型スペクトラム・アナライザーにより評価したところ、スペクトル形状はガウス型で、スペクトル幅は0.6MHzであった。次に、光コムを基準として絶対値が付与されたデュアル光シンセサイザーの光周波数差から絶対値を決定したところ、140,003,403,918Hzであった。最後に、一方の光シンセサイザーの光周波数を厳密に一定に保ちながら、他方の光シンセサイザーに用いている光コムのモード間隔を変化させることにより光周波数の連続走査を行った。その結果、1GHzを超える連続チューニングが可能であることを確認した。周波数走査用光シンセサイザーは最大1.7THzの光周波数走査が可能あるので、広帯域フォトミキサー(光伝導アンテナなど)を用いることにより、1THzを超す連続チューニングが可能になる。
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