研究課題/領域番号 |
23860033
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山根 啓輔 山口大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (80610815)
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キーワード | 窒化ガリウム(GaN) / GaN基板 / ハイドライド気相成長 |
研究概要 |
本研究は、III族窒化物半導体を用いたあらゆる光・電子デバイスに関わる最重要かつ未解決の「無欠陥(転位)GaN基板実現」という課題の中で非極性面GaN薄膜の欠陥抑制扶術を構築することを目的とした。そこでは、申請者グループの独自技術であるサファイア加工基板上の非極性GaN薄膜の成長技術を発展させ、新たにハイドライド気相成長(HWPE)法を導入し低転位(10^6cm^<-2>)非極性面GaN基板の作製を図った。はじめに、様々な面方位(C面、{10-11}、{11-22}、{20-21}面)にGaN層を成長させ、転位の挙動を観察した。結果として、{10-11}面において最も転位密度が減少する傾向が見られた。そのときの転位の挙動は次のようなものであった。下地層でストライプ状に密集していた転位が正WPE成長層において分散する。成長膜厚の増加に伴い、転位が対消滅によって減少する。基板の厚さとして利用できる約500μmまで{10-111面で成長させた場合、3x10^8cm^<-2>から約1x10^7cm^<-2>まで減少した。この減少割合は、c面のそれと同等であった。得られた結果は、国内学会にて発表し(2件)、現在論文執筆中である。また、転位の低減技術としては、流量変調エピタキシーの検討を始めている。一方、GaN基板作製に必須となるサファイア基板とGaN層の分離に関しては計画を前倒しし、c面および加工サファイア基板の両方の場合を検討した。c面では、成長膜厚と成長後の冷却速度を適切に設定することで、2インチGaN基板を得られることを実証した。加工サファイア基板上の場合は、約1mmのGaN層を成長した場合には、面方位に関わらず、サファイア/GaN界面でサファイア基板の大部分が剥離することが実験的に確かめられた。c面の分離機構に関しては特許を出願した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特定の面方位を有する加工基板上GaNのハイドライド気相成長によって非極性面の転位密度を、3x10^8cm^<-2>から現状で1x10^7cm^<-2>まで大幅に低減することができることを見いだした。申請時に掲げた10^6cm^<-2>台という目標に対してもう一歩のところまで来ている。また、基板作製に必要となる基板分離技術も確立しつつ有り、おおむね計画通り川頁調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は(1)ヒロックの原因の究明と抑制方法の開発、(2)流量変調エピタキシー(FME)を用いた低転位化に取り組む。(1)に関しては、成長極初期の状態を観察する。具体的には透過型電子顕微鏡を用い、ヒロック部の断面構造を調べることにより、ヒロックの起源を明らかにする。また、温度とヒロック密度、ヒロックサイズの間にどのような関係があるかも併せて調べる。(2)に関しては、成長初期段階で転位の向きを、成長方向から、面内方向へ積極的に屈曲させる方法を検討する。具体的には、V/III比を変調することにより、三次元成長と二次元成長を交互に繰り返す。三次元成長の後に二次元成長により平坦化することにより、転位を横方向に伸ばし、転位の対消滅の確率を上げる。上記の方法を含め、成長条件の最適化を行っても、発光ダイオードの活性層を作製するに十分な平坦性が得られない場合には表面研磨の検討を進める。
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