研究概要 |
本研究の目的は,提案するパラメトリック振子によるエネルギー・スキャベンジング方式が実際の波動に適用できるかどうか,という研究課題に対して,その力学的なメカニズムに焦点を絞り波動を模擬した実験装置で検証することで,エネルギー変換に適した条件を解明し,海上での実地試験に向けた予備実験を完了することである.本年度の研究実施計画は主に,周波数が相異なる2つ以上の正弦波の重ね合わせにより生成した仮想の波動に対して,パラメトリック振子が回転運動を継続可能な励振パラメータの条件を解明することであった.具体的には,1つ以上の高調波を重畳した励振を対象とし,基本調波だけでなく高調波に対しても同期して回転する運動状態が存在するかどうかを調べた. まず数値的検討を実施した,パラメトリック振子の数理モデルをプログラミングC言語を用いて数値計算し,その運動の時間発展を調べた.基本調波,高調波それぞれの振幅,周波数とそれらの位相差の5つのパラメータを徐々に変化させながら,各パラメータ値に対して運動の定常状態を確認する作業を繰り返し,回転運動を維持する励振パラメータが存在することを明らかにした.次に実験的検討を実施した.実験装置を構築し,数値的検討から絞り込んだ励振パラメータに対して実験を行った.数値計算で予測された通り,基本調波,高調波それぞれに同期した回転運動を観察することに成功した. 高調波に同期する回転運動が存在することが明らかになったことにより,これまで無視されていた高調波成分に分散したエネルギーをスキャベンジングの対象とすることが可能となり,掻き集めるエネルギー量が増大することが期待される.この意味で本年度に得られた研究成果は意義深い. また次年度の研究実施計画に向けて,計画通り,海洋の波動データを取得している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で予定していた実験装置の借用時期に対して,実際は2ヶ月ほど借用が遅くなってしまったが,受け入れ準備を十分に行っていたため,遅れを取り戻すことができた.その結果,本年度の研究実施計画を全て行うことができている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として,取得した海洋の波動データを解析し,そのデータを元に実験装置において海洋の波動を模擬し,実験を遂行していく.また,現時点まで,研究実施計画通りに研究を実施できているため,研究計画の変更は必要ないと考える.
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