研究概要 |
本研究では、繊維補強コンクリート(FRC)と内蔵鉄骨のみで構成される合成構造(Concrete Encased Steel:以下、CES構造)のより汎用性のある精度の高い設計式の構築のため、断面形状を変数とした実験を行い、その耐力性能、変形性能、損傷性能等の基礎的な耐震性能を検証した。 本研究で対象としているCES柱の内蔵鉄骨に用いられる形状としては、H形と十字形が想定されるが、本年度は内蔵鉄骨にH形鋼を用いたCES柱を対象とし、被覆コンクリートのかぶり厚さの違いがCES柱の構造性能に及ぼす影響について検討した。構造実験は、CES柱のせん断性状に着目するため、日本大学生産工学部に設置されている5000kN構造物試験装置を使用し、逆対称加力(大野式加力)方式を採用した。試験体はスケールは約1/2とし、破壊形式がせん断破壊型となるように設計した鉄骨柱1体と被覆コンクリートのかぶり厚さが異なる3体のCES柱の合計4体とした。 今年度の研究により以下の成果が得られた。 ・全ての試験体の破壊形状は、想定通りせん断破壊であった。 ・CES柱のかぶり厚さが厚くなるほどせん断耐力が上昇することが明らかになった。 ・一方でCES柱のかぶり厚さが厚くなるほど最大耐力後の変形性能は低下することが明らかになった。 ・CES柱の被り厚さが薄い場合は鉄骨フランジに沿ったせん断付着ひび割れが顕著であったのに対し,他の試験体は純粋なせん断ひび割れが顕著であり、かぶり厚さによりひび割れ性状が異なることが明らかになった。 ・CES柱のせん断耐力は,既往の設計式では適切に評価できないことが明らかとなったことから,既往の設計式を修正した新たな設計式を提案した。
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