研究課題
当初の予定通りコロラド大学のProf. Markus Raschkeの研究室で近接場チップ増強ラマン分光法(TERS)の条件検討を行った。金属ナノ探針として外気中でも安定なAuを選択して、AFMに用いられるSiN探針に様々な条件でAuを蒸着した。Au探針先端の表面プラズモン励起による電場増強(近接場)を効率的に行えるかはAuの膜厚や形状に大きく依存するので詳細な条件検討が必要となる。試料はstrained Si on insulator(SSOI)基抜を用いた。同試料の構造はSi基板上に埋め込み酸化膜(BOX : buried oxicde)が配置され、そのBOX上に等方性2軸応力が印加された歪Si層(SSOI)がある。TERSの励起光として波長約633nmのHeNeレーザーを用いた。そのため、励起光はSSOI、およびBOXを透過してSi基板まで到達する。SSOIとSi基板の信号比に注目して、Au探針の条件検討を行った。その結果、SSOIの強度比が大きく増大したことから、Au探針先端において近接場が得られたことを確認した。この近接場はAu探針先端径程度の領域に局在しているので、約20-30nmの空間分解能を持っていると考えられる。さらに、TERSの偏光依存性について検討した。TERSの電場増強は励起光の偏光方向に大きく依存する。TERS測定におけるSiラマン散乱の偏光選択則について詳細な解析例は少ない。励起光の偏光方向を細かく制御して近接場により励起されたSiラマン散乱スペクトルを解析した結果、得られるラマン散乱強度は大きな偏光依存性を持っていて、最も効率的な偏光配置を検討した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り初年度でAu金属探針先端の近接場を確認することができた。空間分解能はおよそ20-30nmであり、当初の目標である10nmに比べてやや低い。次年度ではさらに条件検討を進めて当初の目標を達成する。
次年度では、目標であるAu探針先端径10mmを目指してさらに条件検討を進める。また、TERSにおけるSiラマン散乱の偏光依存性を明らかにするために、有限差分時間領域法を用いて近接場の電場分布を詳細に解析する。そして、歪Si試料の局所領域における応力分布評価、および実際の最先端トランジスタを購入してSiチャネル領域に印加された応力分布評価を達成する。
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 51 ページ: "02BA03-1"-"02BA03-7"
10.1143/JJAP.51.02BA03
巻: 51 ページ: "04DA04-1"-"04DA04-5"
10.1143/JJAP.51.04DA04