研究課題/領域番号 |
23860055
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
大岡 優 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (00612475)
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キーワード | 伝統木造 / 耐震性能 / 古材 / 仕口 / 電磁波 |
研究概要 |
平成23年度は、主に以下の研究を実施した。 1、古材の仕口実験 経過年数100年前後のスギ・ヒノキ・アカマツ古材から、柱貫仕口を含む試験体を作成して実験を行った。柱貫仕口は最も基本的な木材のめり込み現象が発生するため、古材のめり込み特性の把握には最適な仕口である。実験の結果、本年度実施した古材においては、新材と比較してめり込み特性が大きく低下することはなかった。 2、古材の材料実験 経過年数100~300年程度のスギ・ヒノキ・アカマツ・ツガ・ケヤキ・クリ古材に対し、圧縮・曲げ・せん断・割裂・めり込み実験などの材料実験を実施した。実験は健全古材を主な対象とし、一部シバンムシなどの甲虫被害を受けた劣化材に対する実験も実施した。実験の結果、健全古材においては、新材やハンドブックなどの参考値と比較して、力学性能が大きく低下するものはなかった。劣化材においては、樹種の違いによって、そのめり込み性能が異なる結果となった。 3、建物の数値解析 ケヤキを主要構造部材としている京都の清水寺本堂に対し、古材の仕口・材料実験結果を反映させた数値解析を実施した。その結果、清水寺本堂においては、部材の老化現象が建物の耐震性能に与える影響は少なく、大地震に対しても倒壊はしない結果となった。 4、電磁波探査による非破壊検査 虫害による内部欠損が実際に存在する古民家の横架材および現地調査によって、電磁波探査による内部欠損把握の有効性について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古材の仕口特性・材料特性の把握においては、平成23年度に実施した実験によって数多くのデータを収集することができた。また、数値解析による経年変化の影響においても、古材の実験結果を反映させた解析を実施することによって、その影響を明らかにすることが可能となった。電磁波探査による内部欠損把握においては、その有効性について検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
古材の仕口特性・材料特性の把握においては、引き続き健全古材や劣化古材を対象とした実験によって行う。現在、経過年数100~300年程度のスギ・ヒノキ・アカマツ・ケヤキの健全古材・劣化古材を所有しているため、適宜これらの古材から試験体を作成していく予定である。また、乾燥収縮による接合部の評価を、高含水率状態で作成した仕口の経過観察および数値解析によって行う。建物の数値解析においては、平成23年度に実施した清水寺本堂以外の建物を対象に行う予定である。また、内部欠損の存在する試験体を対象とした電磁波探査の実験を数多く行うことで、その検査法について詳細な検討を行う。
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