平成24年度は、主に以下の研究を実施した。 1、古材の材料試験:平成23年度に引き続き、経過年数100~300年程度のスギ・ヒノキ・アカマツ・ケヤキ古材に対し材料試験を実施し、古材の材料特性について検討した。その結果、健全古材においては、樹種による違いはなく、剛性・強度などに関して新材より大きく劣ることはなかったが、脆性的な破壊をする試験体が多く確認された。劣化古材においては、シバンムシ(古材を好んで食害するとされる甲虫、伝統木造建築物で頻繁に確認される虫害)による劣化度と材料特性との関連性について整理することができた。 2、古材の仕口実験:経過年数100年前後の古民家解体古材(スギ・ヒノキ・アカマツ)から、主にシバンムシによる食害や腐朽による劣化箇所を含む貫を切出し、十字型通し貫仕口実験を実施した。シバンムシによる劣化においては、劣化の程度が部材表面近くに留まっている場合には、仕口のめり込み性能に大きな影響を与えなかった。しかしながら、シバンムシの食害が材全体に広がり、さらに腐朽を併発すると、仕口のめり込み性能が大きく低下する結果となった。 3、建物の数値解析:懸造形式を有する寺院本堂、禅宗寺院本堂、唐門に対し、健全古材・劣化古材を用いた実験結果を反映させた数値解析を実施した。その結果、構造の違いにより、部材の老化・劣化と建物の耐震性能との関係性に違いがでることがわかった。 4、研究のまとめ:健全古材・劣化古材を用いた実験及び、それらの結果を反映させた数値解析によって、建物の耐震性能に大きな影響を与える経年変化(腐朽・虫害・老化)について整理した。また、平成23年度に実施した「電磁波探査による非破壊検査」の検討と併せ、現場での建物の健全度調査手法について検討した。
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