研究概要 |
エネルギー効率が極めて高く温室効果ガス削減への貢献が期待される電気自動車の普及において,課題となる十分な充電インフラの確保の策として家庭のカーポートなどに充電装置を分散配置する上で,非接触充電装置は高齢者を含めた幅広い利用者が容易に安全に扱うことができるので次世代充電装置として期待されている。しかし従来の非接触充電装置は,給電用の高周波電力を発生する高周波インバータを複数のスイッチング素子の組み合わせでつくっていたため,構成が複雑で高価となっていた。そこで本研究では電気自動車の非接触充電装置を最もシンプルな構成で実現する開発に取り組んだ。 平成23年度は,非接触充電装置用に簡素な構成かつ安定性や効率に優れた高周波インバータとして単一のスイッチング素子で動作する磁気結合共振形シングルエンデッドインバータの原型開発を行った。非接触で給電を行う給電コイルと受電コイルの間の磁気結合を適切に設計することにより漏れインダクタンスを利用した共振でソフトスイッチング動作が得られたので,少ない部品で低スイッチング損失の運転ができる。また非接触充電に適用する制御手法として,給電-受電間で特段の通信などを行わなくても受電側で負荷インピーダンスを変化させることにより最適運転を保ちながら伝送電力を可変できるシンプルな制御システムを開発した。さらに総合的な実機製作検証として,結合係数0.7程度の給電・受電コイルを用いて900V60A定格のIGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor)をソフトスイッチング動作させ1kW25kHzの非接触電力伝送を達成,出力段のコンバータと充電制御回路も加えて実際の電気自動車で1kWの非接触充電動作を確認し,全体システムの原型を完成した。
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今後の研究の推進方策 |
電気自動車の非接触充電装置を最もシンブルな構成で実現するため,平成23年度に非接触充電用のシングルエンテッドインバータの原型を開発したが,平成24年度は従来のシリコンに替わる新しい素材のワイドバンドギャップ半導体を適用して,電気自動車の充電装置として要求される出力の確保と高効率の運転を実現する。適用するための基礎技術として,最適の駆動方法や動作信頼性を確保する手法,また素子の最適仕様決定法などを新たに確立する。 今後の研究には学部学生、5名および大学院学生1名が参加する予定であり,必要な実験スペースおよび信号発生器や計測器も確保している。また,これまでの研究経歴の中でパワー半導体企業の研究機関との人的ネットワークができており,関連する研究資料や供試品を得ることができる。
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