エネルギー効率が極めて高く温室効果ガス削減への貢献が期待される電気自動車の普及において課題となる十分な充電インフラの確保の策として家庭のカーポートなどに充電装置を分散配置する上で,非接触充電装置は高齢者を含めた幅広い利用者が容易に安全に扱うことができるので次世代充電装置として期待されている。しかし従来の非接触充電装置は,給電用の高周波電力を発生する高周波インバータを複数のスイッチング素子の組み合わせでつくっていたため,構成が複雑で高価となっていた。 そこで本研究では電気自動車の非接触充電装置を最もシンプルな構成で実現する開発に取り組み、非接触充電装置用に簡素な構成かつ安定性や効率に優れた高周波インバータとして単一のスイッチング素子で動作する磁気結合共振形シングルエンデッドインバータの開発を行った。 非接触で給電を行う給電コイルと受電コイルの間の磁気結合を適切に設計することにより漏れインダクタンスを利用した共振でソフトスイッチング動作が得られたので,少ない部品で低スイッチング損失の運転ができる。また非接触充電に適用する制御手法として,給電-受電間で特段の通信などを行わなくても受電側で負荷インピーダンスを変化させることにより最適運転を保ちながら伝送電力を可変できるシンプルな制御システムを開発した。従来のシリコンに替わる新しい素材のワイドバンドギャップ半導体としてSiC(炭化シリコン)MOSFETを適用して,コイル径180mmの送受電コイルで要求される距離30mmにおいて普通充電の実用レベル1kW、効率80%以上の非接触電力伝送を行うシングルエンデッドインバータを実現し、距離100mmまで非接触電力伝送を確認した。さらに受電側のコンバータや充電制御回路も加えて実際の電気自動車で非接触充電および走行確認を行い全体システムの原型を完成した。
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