永久磁石同期モータの制御に適した新しい座標系である"最大トルク制御座標系"の考え方を用いて、位置センサレス制御を高性能化する手法を検討し、以下の成果を得た。1.位置センサレス制御の適用可能な駆動域の拡大(1)位置の推定に用いるモータモデルを改良し、停止・低速時を含む全ての速度・トルク領域で位置センサレス制御が可能であることを示した。(2)最大トルク制御座標系を用いてモータ電流に信号成分を印加し、従来から用いていた拡張誘起電圧方式による位置の推定法が適用可能であることを明らかにした。(3)また、同手法を用いることで、信号電流によるトルク外乱を与えることなく、位置の推定が可能であることを示した。2.パラメータ変動と信号印加条件の関係(1)温度変化や磁気飽和現象によって、抵抗やインダクタンスなどのモータパラメータに変動があった場合に位置推定に生じる誤差を解析的に導出し、その性質を明らかにした。(2)最大トルク制御座標系を用いてモータ電流に信号成分を加えることで、パラメータ変動による位置推定誤差を抑制できることを示した。(3)印加する信号の周波数を数百Hz帯に設定したときに位置推定のゲインが向上することを実機実験により明らかにした。(4)信号周波数を低周波化することにより、信号印加に伴う騒音の低減につながることを実験により示した。速度制御や電流制御の総合的な性能評価については十分な検証ができず、今後の課題と考える。
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