生体内で脳は振動しているにも関わらず、神経細胞の膜電位応答を記録する電極は実験台に固定されている。脳内の情報処理を解き明かすためには細胞内記録法による膜電位変化の記録が必須であるが、この様な測定系では行動中の動物から長期間の安定した神経活動記録を行うことはできない。本研究の目的は、脳振動追従型3次元マイクロマニピュレータシステムを開発することで、行動中の動物から神経細胞の膜電位応答(活動電位とシナプス後電位)を長時間安定して記録することである。 本研究課題の2年目にあたる本年度は、初年度で得た結果に応じて脳振動の計測方法を変更した。当初の研究計画では、レーザ変位計またはレーザドップラ振動計を用いて脳振動を計測する予定でいた。しかし、この方法では長時間の脳振動計測に不向きであることが明らかになった。レーザ変位計は受光エラーが生じ易く、一度受光エラーが生じててしまえば計測復帰までに時間がかかってしまう。また、レーザドップラ振動計ではオフセット成分の重畳により速度の直流成分を長時間正確に計測できないという理由による。そこで、高速ビジョンシステムによる脳振動計測システムの確立に着手した。本システムでは脳表面に置かれた直径50μmのマイクロビーズを高速に撮影、その映像を解析することで脳振動を3次元計測する。構築のために必要な予備実験、機器の選定、固定冶具の製作は既に完了している。本研究は研究期間後も続ける。脳振動計測システムが完成し次第、初年度に開発した3次元マニピュレータに接続し脳振動追従装置の完成を目指す。
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