研究課題
本研究の目的は、超伝導/絶縁体/常伝導/絶縁体/超伝導(SINIS)接合構造をもつ単電子トランジスタを用いて直流電流標準を実現することである。電流値を正確に測定することは、構造の微細化が進み微小な電流を測定することが求められる現在のエレクトロニクスにおいては必須な技術である。これまでの電流標準は、ジョセフソン電圧標準および量子ホール抵抗標準を用いて間接的に実現されてきたが、本研究では、SINIS接合構造を持つ単電子トランジスタを用いることにより直接的に電流の標準を実現し、実現した単電子トランジスタを並列に組み合わせることで、ナノテクノロジーなどにおいて重要性が増している数pA~数nAの電流標準の確立を目指している。本年度は、SINIS接合構造をもつ単電子トランジスタを動作させるため希釈冷凍機中に高周波ケーブルの組み込み、室温測定系の構築を行った。また電流を生成するSINIS型単電子トランジスタの作製を行った。この成果については「日本物理学会第67回年次大会」「NMIJ成果発表会」において発表を行い、「計量標準報告」に解説記事を投稿した。今後はさらにこのSINIS型単電子トランジスタを並列化させ大電流化を目指す。またこの研究を発展させジョセフソン効果による電圧、量子ホール効果による抵抗と組み合わせ、電気素量eの絶対測定、オームの法則を介した基礎物理学定数の整合性の確認を行う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画通り、測定系の構築、電流標準サンプルの作製を行い、その結果について学会等で発表を行っている。また当初予定した超伝導、常伝導を用いた単電子トランジスタ素子だけではなく、半導体二次元電子系を用いた新規デバイスも作製しており計画は当初の予定以上に進んでいるものと考える。
数pA~数nAの電流標準の確立を目指して超伝導、常伝導単電子トランジスタを用いた研究を引き続き行う。今後は構築した測定系を用いて作製した素子の動作を確認し、並列化素子を用いて定電流生成を目指す。また、超伝導、常伝導単電子トランジスタだけではなく、半導体二次元電子系を用いた素子、一次元超伝導細線を用いた素子による電流標準の研究も並行して研究を進め電流標準実現に向けた研究を加速させる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (11件)
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