本研究の目的は、超伝導/絶縁体/常伝導/絶縁体/超伝導(SINIS)接合構造をもつ単電子トランジスタを用いて直流電流標準を実現することである。電流値を正確に測定することは、構造の微細化が進み微小な電流を測定することが求められる現在のエレクトロニクスにおいては必須な技術である。これまでの電流標準は、ジョセフソン電圧標準および量子ホール抵抗標準を用いて間接的に実現されてきたが、本研究では、SINIS 接合構造を持つ単電子トランジスタを用いることにより直接的に電流の標準を実現し、実現した単電子トランジスタを並列に組み合わせることで、ナノテクノロジーなどにおいて重要性が増している数pA~数 nA の電流標準の確立を目指している。本年度は、以下の成果を得た。 ① SINIS接合構造を持つ単電子トランジスタによる定電流生成 超伝導/絶縁体/常伝導/絶縁体/超伝導(SINIS)接合構造をもつ単電子トランジスタを用いて数十pA程度で4桁程度の不確かさを持つ電流の生成に成功した。 ② 素子の並列化による電流増幅 素子を並列化し電子をポンプすることで数百pAの電流を生成することに成功した。また矩形波駆動による電子ポンプへの影響を詳細に調べた。その結果、ある条件では不確かさが低減されることが分かった。
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