研究課題
我々は、生体内組織形成術を用いてアクリル円柱材の皮下埋入によって得られる管状の結合組織体をバイオチューブ人工血管として開発しているが、このバイオチューブは移植に耐え得る力学的強度を有する一方で、壁厚が薄く操作性に優れない、また、内皮層が存在しないため移植後の組織再構築までの数ヶ月間は血栓閉塞の恐れがあるなどの問題点がある。そこで本研究では、脂肪組織に含まれ内皮や平滑筋細胞の前駆細胞を含む間質細胞群(ADSC)に着目し、細胞工学的アプローチによりバイオチューブの移植時や作製段階においてADSCを導入することでバイオチューブの早期の再構築化を目指した。①移植時におけるADSC導入の検討昨年度は、バイオチューブへのADSC懸濁液の注入を検討したが、注入したADSCの大部分はバイオチューブにはほとんど生着せず、周辺組織に拡散してしまった。そこで本年度は、播種細胞の一体凝集化が可能な特殊な培養皿を開発し、この培養皿を用いて得られたADSC凝集塊の貼付によるバイオチューブの再構築化促進を試みた。その結果、ADSC凝集塊はラット腹部大動脈移植下のバイオチューブに良好に生着、凝集塊から侵出した細胞がバイオチューブの壁内および内腔面まで浸潤することでバイオチューブはわずか3週間で再構築化された。この結果により、本研究目的はほぼ達成されたといえる。現在、大型動物での移植実験を進めている。②作製段階におけるADSC導入の検討昨年度は、ADSCを充填した多孔性の円筒基材をラット皮下組織内に2週間埋入することで、内皮層に加え平滑筋も有するバイオチューブの作製に成功した。本年度は、再現実験を中心に行い、ADSCが鋳型から侵出し内皮や平滑筋細胞としてバイオチューブに融合していることを裏付けるデータを得た。現在、大型動物を用いた移植評価実験を進めている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Japanese Journal of Artificial Organs
巻: In press ページ: In press