Bub1は、分裂期において動原体に局在し、正確な染色体分配に重要な役割を果たす進化的に保存されたキナーゼである。Bub1がその機能を果たすためには、動原体へと局在化することが必須であるが、その動原体局在化機構は不明な点が多かった。これまでの知見として、Bub1と複合体を形成するBub3、動原体の構成因子であるKNL1、そして、進化的に保存されたキナーゼであるMps1がBub1の動原体局在に必要であることが分かっていた。本研究では、分裂酵母を用いてBub1の動原体局在の分子機構を解析した。その結果、分裂酵母のMps1ホモログMph1は、分裂期特異的に動原体へと局在化し、KNL1のホモログSpc7をリン酸化することが分かった。とくに、Spc7のT257については、リン酸化特異的抗体を用いることで、実際にin vivoで分裂期特異的にリン酸化を受けていることを明らかにした。これらのリン酸化部位を非リン酸化型にした変異型Spc7を発現する細胞では、Bub1が正常に動原体に局在できず、染色体分配に異常をきたした。また、in vitroのプルダウンアッセイによって、Spc7のMph1によるリン酸化が、Bub1-Bub3複合体とSpc7の結合を促進する働きがあることを明らかにした。これらの結果は、Bub1の動原体局在を制御する分子機構を明らかにするのみならず、進化的に保存されたキナーゼであるMps1の、これまで未同定であった基質を明らかにしたという点に置いて、重要である。
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