生命活動にとって重要な細胞内小器官であるミトコンドリアの機能を維持するために、オートファジーが果たす役割を明らかにする。これまでに代表者所属研究室で明らかにされた、オートファジー不能マウスの肝臓にて認められる多発生腫瘍とミトコンドリア機能不全の知見をもとに、本研究計画では、これらマウスのミトコンドリアが機能不全に陥る原因が、障害ミトコンドリアのオートファジーによる分解(マイトファジー)の不全によるのか、あるいはそれとは独立に、ミトコンドリアの完全性維持に関わるオートファジー機能の不全によるのかを、細胞生物学的および生化学的に検討することで明らかにすることを目指している。当該年度はまず、オートファジーをマウス肝臓で特異的に欠損させたのち、どの時点でミトコンドリアの機能不全が提示されるかを、肝特異的任意ノックアウトマウスから得られた肝臓ミトコンドリアの生化学的解析から検討した。ミトコンドリア呼吸鎖活性やミトコンドリア構成タンパク質の発現量の詳細な比較検討から、ミトコンドリアの機能不全が提示されるのは、オートファジー欠損後比較的早期であることを明らかにした。これら早期のミトコンドリア活性低下やミトコンドリア構成タンパク質の変化については、これまでに同様な報告はなく、障害ミトコンドリアの駆除(マイトファジー)だけではない、より積極的にオートファジーが関与するミトコンドリア機能維持機構の存在が新たに示唆された。
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