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2011 年度 実績報告書

高次血縁度から理解する社会性進化理論

研究課題

研究課題/領域番号 23870009
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

大槻 久  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (50517802)

キーワード血縁淘汰 / 血縁度 / coalescence / 集団遺伝学 / 協力の進化 / 進化ゲーム / クオラムセンシング
研究概要

1.多個体相互作用を扱える血縁淘汰理論の開発
n(>2)個体の非線形な相互作用、例えば三個体が同時に集まった時のみ利益が発生する協力行動、の分析は、しばしば血縁淘汰理論の弱点とされてきた。これを克服するため、Hamiltonによって定義された二個体間の血縁度R2を、n個体の場合に拡張した。当初は遺伝子頻度モーメントでRnを定義することを試みたが、nが4以上の場合にn個体の同時合祖確率Fnと一致しない(nが3以下ならR2=F2、R3=F3である)欠点があるためこれをあきらめ、代わって合祖確率F2、F3、…を用いて遺伝子頻度変化の一般式を任意の対称n人ゲームに対して導出した。島モデルの場合、Wrightの公式からこれら同時合祖確率は簡単に求まるため、この一般式により非線形相互作用の重要度を定量的に見積もることが可能になった。
2.クオラムセンシングの進化的起源の理論的解明
クオラムセンシングは、個体数が一定値を越えた時のみ増殖に有益な物質生産を開始するという非線形な協力的形質の好例である。シグナル物質であるオートインデューサーをコードする遺伝子座と、有益物質生産を開始する閾値を決定する遺伝子座を想定した二遺伝子座モデルを開発し、予備実験としてコンピュータシミュレーションを行った。その結果、オートインデューサーは産生するが、有益物質は決して産生しない変異型が常に有利となり、単純な仮定のみではクオラムセンシングの進化は予測できなかった。
この予備結果を踏まえ、現在二遺伝子座の連鎖の強さに着目し、再解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高次血縁度を含むn人ゲーム理論の一般化に関しては、採用する血縁度の定義を遺伝子頻度モーメントのそれから合祖確率へ変更したものの、順調に進み、一般論の構築に成功した。
クオラムセンシングの進化的起源については、モデルの代数的解析には至っていないが、シミュレーションを立ち上げる段階まで進展できた。
ただし外部発表等の成果が挙げられなかった点は課題である。

今後の研究の推進方策

本年度は、高次血縁度の一般理論について早急に論文にまとめるとともに、実際の微生物進化実験系を念頭においた、集団サイズを一定と仮定しない生態学モデルの開発に取り組む。
クオラムセンシングの理論モデルに関しては、フルモデルの次元が高く、シミュレーションは可能でも解析的計算が困難であることが判明したので、まずは分集団サイズn=2の場合の解析にとりかかり、そこから発展を目指す。

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公開日: 2013-06-26  

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