本研究ではシロイヌナズナin vitro胚珠培養系を用いたライブイメージングと、ヒートショックプロモーター系を用いた光顕微操作による単一細胞の機能制御を組み合わせた、時期特異的な特定細胞の機能阻害技術の開発によって、ダイナミックな細胞分裂を伴う胚発生過程において、個々の細胞の機能、そして位置情報がまわりの細胞に与える影響、ひいては形態形成における役割を明らかにする子とを目指したが、平成23年度はin vitro胚珠培養観察系の構築とヒートショック系の構築を行った。 in vitro胚珠培養観察系の構築ついて、in vitro培養条件の検討、また高輝度な核可視化形質転換体および細胞膜可視化形質転換体の選抜によって、初期胚から80時間に渡る胚発生ライブイメージングに成功した。この初期胚発生ライブイメージングによって、4細胞期胚といった初期胚においても、細胞分裂が厳密に同調しているわけではないことが分かった。 赤外線レーザー誘起遺伝子発現操作法(IR-LEGO:Infrared laser evoked gene operator)によるヒートショック系の構築については、ヒートショックプロモーター下にH2B-GFPをつないだ形質転換体の根を用いて、詳細に条件検討を行ったところ、11mWのレーザーパワーで1-2秒照射することによって、1細胞レベルで遺伝子発現が誘導できることが確認された。in vitro胚珠培養下の胚において、レーザー照射条件の検討を行ったところ、8細胞期胚について、11mWのレーザーパワーで4秒照射することによって、1細胞レベルでの遺伝子発現に成功した。 このように、植物初期胚発生における細胞分裂パターン機能の解析の基盤となる、in vitro胚珠培養系を用いたライブイメージングと、光顕微操作を用いた1細胞レベルでの遺伝子発現誘導系を構築できた。
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