研究課題/領域番号 |
23870019
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
塩崎 一裕 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (00610015)
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キーワード | Target of Rapamycin(TOR) / TOR complex 2(TORC2) / Rabタンパク質 / 分裂酵母 |
研究概要 |
本研究課題の目標1では、Gタンパク質であるRyh1がTOR complex 2(TORC2)を活性化する分子機構を解明する。予備実験からTORC2サブユニットの一つであるBit61とRyh1の新規エフェクター分子であるSec21の関与が示唆されていた。Bit61の遺伝子を破壊した分裂酵母株でRyh1とTORC2との結合を検討したところ、Ryh1はBit61に非依存的にTORC2に含まれるTor1キナーゼと相互作用できることが明らかになった。また、GTP結合型のRyh1の組み替えタンパク質と分裂酵母破砕液中のBit61との間には強い結合が検出されなかった。これらの結果から、Bit61はRyh1のいわゆるエフェクター分子とは異なるが、Ryh1はBit61を含む複数のTORC2サブユニットと相互作用している可能性が考えられた。一方、Sec21がTORC2制御に関わっている可能性を検討するために、sec21の温度感受性変異株の作成に取り組んだ。PCRによるランダムな突然変異誘発とゲノムへの組み込みによって、4つの変異株が単離でき、その内の二つ(sec21-3、sec21-4)は36℃ではっきりした生育阻害を示すため、それらを使って今後TORC2活性化への影響を検討する。 本研究課題の目標2では、Ryh1以外のRabファミリータンパク質がTORC2の活性化に働く可能性を検討する。Rabファミリーに属するYpt1、Ypt2、Ypt4、Ypt5、Ypt7、Ypt71について、恒常的にGTPを結合した活性型変異を導入し、分裂酵母での発現したところ、活性型Ypt4によってTORC2依存的なGad8のリン酸化の上昇が見られた。また、発現したYpt4を分裂酵母からアフィニティー精製したところ、Tor1キナーゼの共沈が観察され、Ypt4とTORC2が物理的に相互作用することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に予定していた実験はおおむね実施することができた。特に、sec21遺伝子の温度感受性変異の単離に成功したこと、また、Ryh1に加えてYpt4が新たなTORC2活性化因子の候補として同定できたことは大きな進展である。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した計画に沿って今後の研究を推進するが、特に、Ypt4が新たなTORC2活性化因子である可能性について重点的に検証する。Ypt4は出芽酵母には明らかな相同遺伝子が存在しないが、ヒトを含む高等生物では保存されている。今後、ytp4遺伝子破壊株およびytp4 ryh1二重変異株でのTORC2依存的なGad8のリン酸化を定量する他、顕微鏡観察によりYpt4の細胞内局在を調べてTORC2と共局在するかを検討する。
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