研究課題
本研究では、オートファジーを利用したオルガネラノックダウン法を開発し、真核細胞に備わる未知のオルガネラ量補償機構の解析を目的とする。平成23年度においては、オルガネラノックダウン法の開発を行った。オートファジーを用いたオルガネラノックダウン法においては、特定のオルガネラに局在化するオートファジー受容体の作製が必須となる。本研究では、オートファジー受容体の候補としてp62を用いることにした。p62はサイトゾルに分布するタンパク質であることから、p62をオルガネラのオートファジー受容体として用いるためにはp62を目的のオルガネラ膜上に集積する必要がある。この目的を実現するために、本研究では人工的にヘテロ二量体を形成するシステムを利用した。まずはじめに、ヒト肝ガン由来細胞株HepG2細胞由来のcDNAライブラリーからp62をクローニングした。その後、一方のヘテロ二量体化ドメインであるDmrCドメインとの融合遺伝子DmrC-p62を作製した。さらに、これを簡便に可視化するために、単量体緑色蛍光タンパク質であるmEGFPを挿入したDmrC-mEGFP-p62を構築した。次に、各オルガネラにこのDmrC-mEGFP-p62をリクルートするp62受容体として、それぞれのオルガネラ膜に局在化するタンパク質ともう一方のヘテロ二量体化ドメインであるDmrAドメインを融合したタンパク質をコードする遺伝子を構築した。小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアに局在化するタンパク質としてSec61beta、Giantin、Monoamine Oxidase Aをヒト細胞由来のcDNAライブラリーからクローニングし、DmrAとの融合遺伝子を作製した・これらは可視化するために、mCherryを挿入してある。作製の完了したP62を各オルガネラに集積させるシステムを利用し、平成24年度にはオルガネラノックダウンを行い、オルガネラ量補償システムを解析する。
2: おおむね順調に進展している
助成金が使用可能となったのが昨年の秋からであることを考慮すると、23年度の計画であるオルガネラノックダウンシステムの構築は完了しており、ほぼ予定通り進展しているといえる。
24年度はオルガネラノックダウン法が機能するか確認し、オルガネラ量補償機構が存在するのかを調べる。さらに、オルガネラ量補償機構を担う因子を探索する。
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実験医学
巻: 29 ページ: 1772-1776
Nucleic Acids Res
巻: 39 ページ: 5245-5254
10.1093/nar/gkr132