研究概要 |
Cryptochrome(CRY)はショウジョウバエの脳内時計細胞で発現している光受容に関わるタンパク質である.平成23年度はまずCRYを特定の時計細胞にのみ発現させるためのトランスジェニック系統の作製を行った.Cryの発現にはGAL4-UASシステムを用い,時計細胞特異的に発現するGAL4系統にはtim-GAL4,cry-GAL4,Mai179-GAL4,Pdf-GAL4,npf-GAL4,trpA1-GAL4,R6-GAL4,c929-GAL4を用いた.これらのGAL4をCryのノックアウト系統のcry^<01>に,交配実験により組み入れた.またCryを発現させるためのUSA-cryも同様にcry^<01>系統に組み入れた.Clk4.1M-GAL4は第三染色体上にあり,cry^<01>と同じ染色体に存在することから,染色体組換え実験を現在行っている最中である.これらのトランスジェニック系統の概日時計における光同調能を解析するために,LEDを用いた光照射装置を開発した.これにより様々な光波長を用いた研究が可能となった.このLED照射装置により光条件を制御し,Trikinetics社のDrosophila activity monitor(DAM)を用いて上記のトランスジェニック系統の歩行活動リズムの計測を開始した.10 lux程度の光照度の下では,cry^<01>の光同調には7日程度必要であることが分かった.tim-GAL4やcry-GAL4を用いて,Cryを本来発現している時計細胞にCryをレスキューすると光同調能はほぼ野生型まで回復した.一方,時計細胞の一部だけにしかCryをレスキューしないと光同調の改善はほとんど見られなかった.このことからショウジョウバエ概日時計の光同調にはCryが本来発現している細胞で発現する必要があることが示唆された.しかし,現在のところ10 luxにおける光条件下でのみ実験を行っていることから,今後はもう少し光照度を上げた場合の実験データが必要とされる.
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