研究概要 |
キイロショウジョウバエ概日時計の光同調には青色光受容分子Cryptochrome(CRY)が大きく関与している.CRYはハエ脳内の時計細胞の一部で発現しており,時計タンパク質TIMELESSと相互作用して,概日時計の光リセットを行う.本研究では,脳内時計細胞群のどの細胞でCRYが発現することが光同調において重要であるかを明らかにするために,時計細胞の一群にのみCRYをレスキューした系統を作製し,行動実験によってCRY依存的な光入力に重要な時計細胞を同定することを試みた.平成23年度より,実験に使用する系統の作製が終わり,平成24年度では本格的に行動実験を行った.光源には白色LEDを用いて,100 luxの光照度における光サイクルの8時間の位相シフトを行い,ハエに8時間の時差ボケを引き起こした.その後,新しい光サイクルに同調するために必要な期間を観察し,それぞれの系統の光同調能を解析した.その結果,時計細胞群の中でもLNdと5th s-LNvと呼ばれる細胞群にCRYがレスキューされると,光同調のスピードが速まることが分かった.つまりLNdと5th s-LNvはCRY依存的な光同調に重要な役割を担っている細胞であることを示唆している. ショウジョウバエの概日時計は複眼からの光入力も重要であることから,上記の実験を眼の持たない突然変異体を用いて行った.CRY突然変異体と眼がない変異体の二重変異体は光に同調ができない.しかし,s-LNvとl-LNvにCRYが発現すると眼がなくても光同調が行えることが分かった.一方,LNdや5th s-LNv時計細胞群にCRYを発現させても光同調性は回復しなかった.このことは,LNdや5th s-LNvは眼からの光入力と相互作用して,概日時計の光同調を促進させていることを示している.
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