研究概要 |
本研究では,白血病原因蛋白質のRuntドメインに対するRNAアプタマーについて,その立体構造から,Runtドメインに対し,より高い親和性を有するRNAアプタマーを創製することが目的である.応募者は,このRNAアプタマーの立体構造を決定することに成功し,DNAを擬態した構造であることを明らかにしている.そこで,この立体構造情報を基にしてRuntドメインに高い特異性を有すると期待できる新規RNAアプタマーのデザインを行った.まずは,SELEXによって得られているRNAアプタマーについて,DNA擬態モチーフの立体構造情報をベースとし,二種類のRNAアプタマーを融合させたRNAアプタマーをデザインした.一通りデザインされたRNAアプタマーが用意できたら,それらとRuntドメインの相互作用解析を行うことで,デザインの妥当性について検討した.この際に,もともとSELEXで得られていたアプタマーも比較のために相互作用解析を行っている.立体構造情報に基づいたデザインの妥当性については,RNAアプタマーとRuntドメインの相互作用について生体分子間相互作用解析装置(SPR)や等温滴定カロリメトリー(ITC)を用いて検討した.その結果,DNA擬態モチーフの近辺のインターナルループのサイズと向きが重要であることが示唆された.これらが立体障害の起こらないように配置され,さらにRuntとの相互作用が存在する場合に,もともとSELEXで得られたRNAアプタマーを超える親和性を得ていることが示唆された. このように従来のSELEXでは得られない配列をデザインし,親和性の向上に成功した-今後,さらに改良を加え,より強力なアプタマーを立体構造情報に基づいでデザインすることができれば,RNAアプタマーを用いた治療薬やセンサーなどの開発に貢献できると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,白血病原因蛋白質のRuntドメインに対するRNAアプタマーについて,その立体構造から,Runtドメインに対し,より高い親和性を有するRNAアプタマーを創製することが目的である.その目的に向かい,初年度において予定通り,従来のアプタマーを上回る活性を持つアプタマーデザインを実現した.このまま順調に進めば,さらに強力なアプタマーを創製することができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については,現在までに,大まかなアプタマーデザインができているので,さらに修飾体を用いるなど,細かいデザインを行っていくとともに,原子レベルでの詳細な相互作用を見るために,アプタマーとRunt複合体の立体構造を明らかとしていきたい.これらにおいては,結晶化が困難である可能性が非常に高いが,応募者はRNA-タンパク質複合体の構造解析に対する知見を多く持っているので,それらを駆使して研究を進めて行きたいと考えている.
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