平成23年度はシロイヌナズナT-DNA挿入変異体プールから選抜された、種子特異的に乾燥ストレス感受性となるdps1変異体の原因遺伝子を同定した。dps1の原因遺伝子は機能未知のタンパク質をコードする新規遺伝子であり、同定した遺伝子の機能解析を進めるためにDPS1のcDNAをクローニングして過剰発現体を作成したところ、DPS1過剰発現体は野生株と比較して高い乾燥耐性を示した。さらに高い乾燥ストレス条件である20mM PEG添加培地で生育させたところ、野生株では植物体の生育不良と種子形成の異常が観察されたものの、DPS1過剰発現株では植物体の生育は正常であり、種子形成も正常であった。この結果はDPS1が植物の乾燥耐性機構に関わる新規遺伝子であり、全身で過剰発現させることで種子だけでなく植物体の乾燥耐性も向上させることを示している。次にDPS1の作用機作を明らかにするために野生株とDPS1過剰発現株を用いた比較トランスクリプトーム解析を行ったところ、DPS1過剰発現株では約100遺伝子の発現が増加しており、その遺伝子群には乾燥耐性に関わる既知遺伝子が含まれていた。また発現が上昇した遺伝子の大部分がサリチル酸応答性の遺伝子であった。サリチル酸はシグナル分子として機能し、植物の環境ストレス耐性に関与していることが知られている。これよりDPS1がサリチル酸シグナルを経由して乾燥耐性を制御している可能性を示唆している。一方、種子特異的に低窒素ストレス感受性となるdps2異体の原因遺伝子はRNAと結合することが予測される新規遺伝子であり、この遺伝子の欠損変異体は胚発生致死となることを確認した。これはDPS2が種子の形成に必須な遺伝子であることを示しており、DPS2RNAの代謝に関与することで低窒素ストレス耐性に関与している可能性を示唆している。
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