平成24年度は種子特異的な乾燥ストレスに関わる遺伝子DPS1、種子特異的な低窒素ストレス関わるDPS2の機能解析を行った。DPS1のプロモーターGUS解析および定量PCR解析からDPS1遺伝子の発現はさやのつけねで強く、種子では確認できなかった。dps1変異体では種子の乾燥耐性が低下して異常な種子になることからDPS1はさやのつけねにおいて種子の乾燥耐性付与に必要な因子の合成に関与し、その因子が種子に輸送されることで種子に乾燥耐性が付与される可能性を示唆している。そこでDPS1により発現制御される遺伝子群の中から細胞外に分泌されて細胞間シグナルの因子となりうる遺伝子を検索した。マイクロアレイ解析の結果から分泌タンパク質をコードする遺伝子Aに着目した。RNAi法により遺伝子Aの発現を抑制すると植物体の生育は野生株と同様であるものの、種子の生育は異常になり、dps1変異体と同様にさやの先端付近の種子が異常な形態を示した。この結果からDPS1はさやのつけねで遺伝子Aを発現誘導し、遺伝子Aの翻訳産物が細胞外に分泌、種子に輸送されて種子の乾燥ストレス耐性に関わることを示している。これは植物体によって種子のストレス耐性のON/OFFを制御されている可能性を示し、種子特異的なストレス耐性の一端を明らかにした。一方、DPS2では細胞内局在解析から葉緑体に局在するタンパク質であることが分かり、免疫沈降法によりDPS2と結合するRNAを決定したところ葉緑体の電子伝達系を担うタンパク質をコードするものであった。これは種子形成において葉緑体の電子伝達系が低窒素ストレス耐性に関与することを示唆しており、発達中の種子における葉緑体の新規機能に迫る重要な知見となる。
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