研究課題/領域番号 |
23870042
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
菅原 文昭 独立行政法人理化学研究所, 形態進化研究グループ, 研究員 (00611005)
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キーワード | 鼻下垂体プラコード / ヤツメウナギ / ヌタウナギ / 比較発生学 / 円口類 / 細胞標 / 予定運命 / 相同性 |
研究概要 |
本年度はまず、円口類ヤツメウナギの鼻下垂体プラコード(以下NHP)の胚発生過程における継時的な遺伝子発現を観察した。その結果、NHPは、形態学的、組織学的には単一の肥厚として発生するにもかかわらず、顎口類の鼻プラコード、下垂体プラコードに相当する遺伝子発現が、プラコード肥厚前よりそれぞれ前後に分かれて観察されることが分かった。このことから、NHPは組織学的には単一のプラコードであるものの、分子発生学的には異なる性質を発生初期から持つ可能性が示唆される。 また、鼻プラコードの予定運命について、ヤツメウナギ初期神経胚に蛍光色素DiIをインジェクションし、どの領域の細胞が鼻下垂体プラコードを形成するのか解析した。その結果、ヤツメウナギNHP前半分、つまり鼻プラコードに相当する部分は顎口類と異なり、正中に単一のものであるのにもかかわらず、その細胞は頭部神経板の両側方に由来する可能性が示唆された。つまりヤツメウナギの鼻プラコードの初期のパターニングは顎口類と共通で、ヤツメウナギでは鼻プラコード予定細胞はのちに正中で合一する可能性が示唆された。次年度はより詳細に細胞を標識するために、フォトコンバージョンタンパク質(KAEDE)を用いたライブイメージング技術の導入を予定している。 ヌタウナギについては、7,8月に成体の入手に成功し、多数の産卵も観察された。現在胚発生中であり、来年度はこの胚を用いて鼻下垂体プラコードの分子発生を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤツメウナギの鼻下垂体プラコードの分子発現解析はほぼ予定通り進行していること。細胞標識による予定運命解析は、例数が不足しているが来年度の手法の改良などで実現可能であること。ヌタウナギも予定通り多数の卵を得ることに成功し、発生を待っている状態であることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ヤツメウナギ鼻下垂体プラコードの細胞標識による予定運命の解析については、DiIインジェクションという手法では胚が壊れやすく、さらに正確な標識が極めて難しいことが分かった。これを克服するため、KAEDEなど蛍光タンパクを胚で発現させ、目的の細胞のみにレーザーを当てて蛍光波長を可逆的に転換させ、予定運命を追う手法を検討している。
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