研究課題/領域番号 |
23870044
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
宮本 教生 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 研究員 (20612237)
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キーワード | ハオリムシ / 共生 / 進化 / 形態形成 / バクテリ |
研究概要 |
ハオリムシ類は、深海の熱水噴出孔や湧水域に生息する無脊椎動物である。消化管を欠いており、食物.を摂食する代わりに、体内に共生細菌持ち、その細菌から栄養を得ている。このような共生システムの分子メカニズムやその進化過程を明らかとすることは、生物の極限環境への適応を論じる上で最も重要な課題である。本研究では、鹿児島産サツマハオリムシを用いて、発生過程における共生細菌の獲得のタイミングとバクテリオサイトの分化、そして共生によってもたらされた消化器官の退化や体制の進化を分子生物学的に明らかとすることを目的としている。平成23年度は、2008年に採集し実験室内で飼育している個体を用いて、神経系や筋肉系を解剖学的に明らかとし、近縁の生物と比較した。これによってハオリムシ類の体制の特殊性と近縁種間での共通性が明らかとなった。また、バクテリオサイト・口・肛門・消化管・体節など、ハオリムシ類において特殊化もしくは退化している組織や器官の形成に関わる様々な遺伝子のクローニングを行なった。今後これらの遺伝子の発現を詳細に解析していくことで、ハオリムシ類において、特殊な形態進化や共生関係の成立に関わった遺伝的な変化を明らかとする予定である。 また、鹿児島湾において、新たにサツマハオリムシを採集し、様々な発生段階の胚を得ることに成功している。しかしながら、現在のところ幼生が着底、変態するステージまでの飼育には成功しておらず、今後の課題となっている。今後、現在得られている発生ステージにおいても同様に遺伝子発現を解析することで、発生段階における組織の分化や退化を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた、新たなハオリムシの採集や各発生ステージのサンプリングはおおむね順調に進んでいる。また発現解析をする遺伝子クローニングは計画以上に進展をしている。しかしながら、変態期のサンプルを得ることには未だに成功していない。以上の点から総合的に判断して、自己評価は(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、未だ成功していない変態期のサンプルを得るために、幼生飼育方法を改良する。また現在得られているサンプルを用いて、既にクローニングした様々な遺伝子の発現部位を明らかとして、その結果を近縁種と比較することで、ハオリムシ類の特殊性を明らかとする。また、ハオリムシのバクテリオサイトと共生菌の相互作用を明らかとするために次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析も予定している。その結果得られた遺伝子を詳細に研究することで、共生の成立に必要であった分子基盤を明らかとする。
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