トマトは果実発達研究のモデル植物であり、花成から花序形成、そして果実形成と果実特有の現象の分子機構を明らかにすることは基礎研究として重要である。トマトは日長に関係なく花芽を形成して開花する中性植物である。長日植物であるシロイヌナズナや短日植物であるイネとは異なった花成制御機構をもっている可能性があり、この機構を明らかにすることは長日植物や短日植物を中性植物化するための重要な知見となる。本研究では、花成制御機構や花序形成機構に関与すると考えられる遺伝子を過剰発現させた遺伝子組換えトマトの解析から、これらの機構の一端を明らかにすることを目的とした。 本年度は花成が遅延するSP5G過剰発現体の表現型を人工気象器において、環境を一定条件にすることで、より詳細な表現型を明らかにした。‘Micro-Tom’の野生型はSPに変異が入っているため,有限生長である.一方で,SP5G過剰発現体は3系統とも無限生長を示した.野生型のSP5Gは茎頂分裂組織で発現していないが,SP5G過剰発現体では発現していることから,SP5GがSPの機能を補っていることが考えられた.また,Azygous系統や野生型はおおよそ播種30日後に開花したが,SP5G過剰発現体はさらに栄養生長を続けた.主茎は太く,長くなり,葉色は濃くなった.以上のことから,SP5Gは栄養生長を増強する機能を持っていることが示唆された.一方で,SP5G過剰発現体では,開花までに3ヶ月以上が必要であり,Azygous系統や野生型と比べて,3倍以上の明らかな開花遅延がみとめられた.以上のことから, SP5Gは花成制御においてリプレッサーとして働いていることが示唆された.
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