研究概要 |
本研究ではストリゴラクトン(strigolactone:以下SLと省略)と呼ばれる化合物群を研究対象とする。SLは、植物体内では地上部の枝分かれを制御する植物ホルモンとして機能し、植物の根から土壌根圏に放出されるとアーバスキュラー菌根菌およびストライガやオロバンキなどの根寄生雑草の宿主認識シグナルとして働いている。本研究では、植物界におけるSLの起源、本来の生理機能を明らかにするため、植物の進化では最も基部に位置するとされるタイ類の代表であるゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.)を用い、植物が陸上へ進出した際にSLが存在したかどうか、さらに生産する場合には、生育ステージの違いによるSLの質的・量的な違いがあるかどうかを検証した。 実験方法としては、ゼニゴケ(Takaragaike-1)の無性芽を1/2Gamborg's B5培地で培養した。10,15,20,25,30,35,40日間に培養した植物体をそれぞれ回収し、そのまま酢酸エチルに2~3日間浸漬した。ろ過後、0,2MK_2HPO_4水溶液で洗浄し、脱水濃縮して酢酸エチル可溶中性(NE)区を得た。NE区はシリカゲルクロマトグラフィーで精製後、LC-MS/MS分析した。 その結果、ゼニゴケの生育ステージ別にSLの生産を解析したところ、無性芽の移植から10,15,20日にかけてはSLの生産が認められなかった。25日目以降に、fabacyl acetate、5-deoxystriol、orobanchyl acetateおよびsolanacolが検出された。さらに、ゼニゴケでもヒメツリガネゴケのように生育ステージが進むにつれて生産するSLの総量が増大する傾向が認められた。本研究結果から、植物が陸上に進出した時にはすでに(あるいはほぼ同時に)SLが存在しており、原始的な陸上植物においても種子植物同様に複数のSLを生産していることが証明された。
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