研究課題
1.NF-κBによるGR発現調節メカニズムの解析実験には、ヒトBurkitt型リンパ腫由来のRaji細胞を使用した。グルココルチコイド受容体発現調節の候補因子であるc-Myb、PU.1、SRp20、SRp30c、SRp40、およびASF/SF2について、NF-κB阻害剤添加による発現変化をRT-PCR法およびウェスタンブロット法により解析したところ、PU.1とSRp30cのみがNF-κBの阻害によって発現量が減少した。したがって、NF-κBの活性化によるグルココルチコイド受容体発現低下には、PU.1とSRp30cが深く関与していると考えられた。また、クロマチン免疫沈降法により、PU.1が実際にグルココルチコイド受容体プロモーターに結合しており、NF-κBの機能阻害によってその結合が抑制されることを確認した。2.適応腫瘍選定のための基礎データの収集高知大学医学部より提供を受けたヒトのリンパ腫・白血病症例の腫瘍細胞に関して、BrdU取り込み試験によってグルココルチコイド感受性を検証した。その結果、細胞株を用いたプレ実験と同様に、NF-κBの活性化を阻害することでグルココルチコイド感受性が回復することが明らかになった。3.in vivoにおけるNF-κB阻害剤によるグルココルチコイド耐性解除効果の解析免疫不全マウスであるSCIDマウスに腫瘍細胞を腹腔内投与し、腫瘍細胞が増殖する条件を探索したところ、1×10^7個のRaji細胞を接種することで腹腔内および腹腔内臓器でRaji細胞が生存・増殖することが明らかになった。Raji細胞を接種したマウスは約3週間で腹水貯留および腹囲膨満を呈し死亡したため、NF-κB阻害剤によるグルココルチコイド耐性解除効果の解析に使用する腫瘍モデルとして確立できたと考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実施計画に記載した項目はほとんど網羅しつつ実験が進んでいる。部分的には平成24年度に計画していた実験も平成23年度中に開始できている。
平成23年度の研究により、NF-κBの活性化はPU.1とSRp30cを介してグルココルチコイド受容体の発現を低下させている可能性が示唆されたため、この2つの分子についてサイレンシング技術を用いた実験を行い、その役割を詳細に検証していく予定である。また、PU.1とSRp30cについて、アンチセンスオリゴ等による機能阻害がグルココルチコイド感受性の回復に効果的かどうかを検証し、より安全性の高い感受性回復法の確立をめざす。また、平成23年度に作成した腫瘍モデルを用い、NF-κB阻害剤や上記オリゴによって、実際に生体においてリンパ腫のグルココルチコイド感受性を回帰させることが可能かどうかを検証していく。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)
Vet Immunol Immunopathol
巻: 144 ページ: 321-328
10.1016/j.vetimm.2011.08.013
Am J Physiol Cell Physiol
巻: 301 ページ: C1360-1367
10.1152/ajpcell.00514.2010
Cardiovasc Res
巻: 92 ページ: 209-217
10.1093/cvr/cvr203
Curr Eye Res
巻: 36 ページ: 350-357
10.3109/02713683.2010.542268
Vet J
巻: 190 ページ: e72-77
10.1016/j.tvjl.2010.12.027