研究課題/領域番号 |
23880011
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
今村 彰宏 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (30610951)
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キーワード | NKT細胞 / ガラクトシルセラミド / グリコシル化 / 抗腫瘍 / 有機合成 / 糖鎖 / 免疫学 / 複合糖質 |
研究概要 |
本年度は、NKT細胞の免疫賦活能を高めることが期待される新規糖リガンドとして、還元末端にα-ガラクトサミン残基を有するα-ガラクトシルセラミド類縁体の合成を試みた。設計した新規糖脂質は、海綿由来の天然物を模した構造であり、過去において人工的に合成された例は無い。強力な抗腫瘍活性を有するα-ガラクトシルセラミドが海綿から抽出された事実に鑑みると、本研究で設計した新規α-ガラクトシルセラミド類縁体が持つ生理活性作用は興味深い。 設計した目的化合物の合成戦略として、まず、構造上の基本骨格であるα-ガラクトースユニットを構築後、その3位水酸基から糖鎖を伸長し、最終段階でセラミド部位を導入する手法をとった。この戦略に従い実際の合成研究では、安価で入手可能なD-ガラクトースを出発物質として、まず3位に遊離の水酸基を有するガラクトースユニットを合成後、その3位水酸基にガラクトサミン残基をα-選択的に導入した。この反応は、申請者が独自に開発したDTBS-directedα-Galactosylation法を用いることで極めて効率的に達成された。続いて、合成した二糖誘導体と脂質部位(スフィンゴシン誘導体)とのカップリング反応も同様にα-選択的に進行し、効率的に糖脂質骨格の構築に成功した。次に、スフィンゴシン部位に長鎖脂肪酸であるセロチン酸を導入し、セラミドへと変換した。合成の最終段階として、すべての保護基を脱保護して目的物への誘導を試みたが、得られた生成物の各種溶媒に対する溶解性が極めて乏しいという予想外の結果を得た。生理活性評価への応用を考えると、合成物の水系溶媒への溶解性は重要なポイントである為、この欠点の改善が合成上の課題として浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
目的とする化合物の骨格合成は順調に進行したが、最終段階における脱保護反応の際に予想外の事態(溶解性の悪さ)に遭遇し改善が必要になったため。
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今後の研究の推進方策 |
合成研究に関しては、上述した課題に直面したものの、研究当初に立案した合成戦略はこの課題に対応しうるものであることから大きな変更点は無い。ただし、合成物の溶解性を考慮し、導入する脂肪酸の炭素鎖長を工夫するなどの改善が必要であり、次年度はこの点に注力して全合成を達成する。また、同様な戦略を用いて当初設計した三種の新規糖リガンドの合成も試みる。すべての糖リガンドの合成が完了した後、それらのNKT細胞に対する免疫賦活活性を調査する。
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